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お別れですね。

また大切な人との別れがありました。社会人となって以来の、一期上の先輩だった桂直之さん。東京支社編集部時代に、ともに永田町や銀座、新橋界隈をウロウロしました。共通の趣味が映画と音楽、パソコンだったこともあって、弟分として扱っていただいたように思います。社内の「非行少年」たちとともに「カップめん」というロックバンドを作ったときは、ライブに必ず来てくれたので、いつの間にか「カップめんの父」と呼ぶようになりました。自然で飾らない人柄が魅力でした。まだ69歳。ご冥福をお祈りするとともに、心から感謝いたします。

映画や音楽に造詣が深いのに甘えて、河北新報社の映画サイト「シネマに包まれて」に、フランス・ナントで毎年開かれる映画祭「ナント三大陸映画祭」のリポートを2008年から2014年まで連載してもらいました。毎年、自費で取材に行っていました。河北新報の社員であるとの理由で、原稿料は受け取ってくれませんでした。
2008年当時は、インターネット回線がまだ不安定で、デジタルカメラの性能もそこそこでした。写真の画像データを適正化して送信しやすくするほどのパソコン関連の知識もなかったので、現地からの写真送信がかなりの負担になったはずです。編集者に対して苦情や注文をつけずに、何事も自分で解決するタイプでした。

NPO法人「シニアのための市民ネットワーク仙台(通称シニアネット仙台)」が隔月に発刊する会報には「なんでもシネマ」と題する映画コラムを連載していました。ナント映画祭同様、わたしが編集者の立場で原稿を受け取り、NPOの会報担当者に渡しました。連載中は仕事や体調の関係で辛そうなときもあったので、何度か休載を打診しましたが、そのたびに「大丈夫」との返事が返ってきました。ウェブへの掲載も含めて実に93回。15年以上続きました。もちろんこれも謝礼はありません。

2016年7月号に掲載された93回目「子どもの喪失と父親」では、横山秀夫原作の「64」(瀬々敬久監督)を取り上げました。コラムの中で桂さんは「時間が止まったまま、無言電話をかけ続けることで、声から犯人を知ろうとして生きてきた雨宮。娘と正面から向き合ってこなかったという悔いを抱える三上。ある種の諦めの雨宮と、まだ希望を捨てていない三上、共通する喪失感を背負った2人の対話シーンが印象深い」と書きました。

シニアネット仙台のウェブがリニューアルすることになったので、別のブログサイトを立ち上げようと相談していました。思うように時間がとれず、ほとんど手つかずですが、関心のある方はライブドア版「なんでもシネマ」をぜひご覧ください。初回から、絶筆となった93回目までお読みいただけます。

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