共同通信社からアカデミズムの世界に飛び込んだ畑仲哲雄さん(龍谷大学社会学部准教授)の「ジャーナリズムの道徳的ジレンマ」は、現代のジャーナリズムが抱えるさまざまな問題点や課題について考え、解決の道を模索するための書です。新聞社やテレビ局など報道機関の「中の人」が当事者として問題を認識するための準備ツールと言っていいでしょう。
Webで連載が始まった直後は畑仲さんの脳内トレーニングの成果も含めてとりあえず重要な論点が初めから提起されていることに満腹感を感じてしまいました。これから多くの本を読み、考えるべき学生さんにとっても、いささか親切すぎるのではないか、と感じたものです。筆者の深い意図を知る前に投げ出してしまったことを自白しなければなりません。
罪滅ぼしになるかどうかは分かりませんが、第4章「ルールブックの限界と課題」のCASE013「ジャーナリストに社会運動ができるか」をテーマに議論したい気分いっぱいです。他の問題も含めて、組織としての報道機関の本音と建て前が微妙に絡むし、「記者」を職業として選んだ人の、本来あるべき可能性や拡張性など、素材にしたい観点が多々あります。とはいえ、「中の人」がその気にならないのに、外側であれこれ話しても仕方がないのですが・・。