新聞の世界では「主読紙」「併読紙」という言い方があります。全国紙と地方紙の複数を複数購読する場合も、どれを「主読」と言うかは別にして、確かにありました。(今でもあるでしょう)
ここ数年、新聞各社はネットで自由に読んでもらう記事を絞り込む傾向にあります。新聞購読とのセット料金を設定するなど、売り上げに結びつく有料読者を囲い込もうとしています。世界的な傾向でもあるし、迷いながらも新しい道を模索する努力を単純に否定するつもりはないのですが、その結果、たとえばネット検索で上位にくるのは無料でニュースコンテンツを公開している新聞社の記事になっていることに気付いていますか?
ネット検索の結果、コンテンツがどんな順番に表示されるかについては、専門的で複雑な事情があるので触れませんが、大まかに言って、アクセスが多ければ多いほど上位に表示されるようです。
ネット利用者が受けている最大の恩恵は「多様性」です。新聞社が自分の利益を最優先に考え、利用者の囲い込みに走った結果、新聞社系のコンテンツが利用しにくくなり、利用者の期待値もどんどん下がるとしたら残念なことです。ネット利用者がネットの現状について何を感じ、どう行動しているのか。その中で自社のコンテンツがどう利用されようとしているのか、にもっと関心を持った方がいいです。
新聞社のニュースをネットで読もうとしても、途中で有料サービスに誘導されるので、最近では見出しをサッとながめるだけになってしまいました。新聞社が提供してくれるニュースコンテンツへの期待がどんどん下がっているのを実感します。
ネットで「主読」を決められるのなら、有料契約することにやぶさかではありません。しかし、そのためには新聞購読とはまったく異なる体験を提供してくれることが最低条件です。一部に例があるように、新聞購読者に限っておまけとしてネットコンテンツをサービスするレベルでは話になりません。
今なお新聞に親しんでくれている人が、ネット商品をどの程度希望しているのでしょうか。そのあたりのリサーチがいい加減だったり、スマホ全盛の世の中にあって、新聞全紙大の画像を価値あるものと勘違いしたりしてはいないでしょうか。新聞購読者、ネット利用者双方のニーズをもう一度洗い直した方がいいでしょう。
いわゆる全国紙の場合、地理的にみると、新聞とネットのマーケットがほぼ同じなので、ネット環境に合わせた新サービスを開発するには苦労が多いはずです。今の時点で有効なのはネットコミュニティを面白くかつ多彩に演出するサービスぐらいです。それも、全国展開のメディアにありがちな、テーマに依存するタイプのコミュニティでは駄目でしょう。地理的環境を本格的に踏まえたコミュニティビジネスを幾つも開発するぐらいの思い切りが必要です。
地域に由来する新聞社なら地域限定の新聞と、その気になれば地球規模で広がるネットのマーケットが重なることはありません。最も得意とする地理的要素をしっかり踏まえたネットビジネスを開発できない方がおかしい。条件の違う全国紙の動向を気にしたり、とりあえず目につく先行事例を真似たりするだけではどうしようもありません。成功への可能性は自らの中にある、と考えた方がよさそうです。
*写真は本文とは関係ありません。