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ネットを理解し、次のステージを目指す/西東京市の地域報道メディア「ひばりタイムス」(6)

「新聞やテレビで仕事をした人たちが全国各地で、地域メディアを立ち上げることができれば面白いでしょうね。各地の地域メディアが協力し合う中で、メディアを運営するための資金の確保なども、きっと手掛かりが見えてくるはずです」

「ひばりタイムス」の創設者で編集長の北嶋孝さんは、団塊の世代を先頭に地域社会に増え続けているメディアOBが地域メディアにかかわってほしいと考えています。

北嶋さんは通信社を卒業後、文化関係のキャリアを生かして地域の演劇活動を支援するメディアの編集にほぼ10年携わりました。70歳になってから地域報道メディアをネットメディアの形で立ち上げ、取材する日々を送っています。自らの暮らしの場でもある地元でメディア事業を続けるための経験値は相当、分厚いものを感じます。

以下、私見をまじえて締めくくりとします。お付き合いください。

「ひばりタイムス」のような地域メディアをメディアOBが自分で新たに立ち上げる場合、メディアとしてカバーする範囲や提供するニュースの量、更新頻度などをあらかじめ見積もる必要があります。特に創設者の個人的なパワーにはどうしても限界があります。1年を通して安定的にメディアを運営できるだけの人的なネットワークづくりは、メディアを創設した後も、常に意識しておくべき課題です。

インターネットの理解と実践のパワーも欠かせません。ネットが登場してほぼ20年。アクセス数や訪問者数が重視されてきましたが、最近では、ソーシャルメディアも含めた、柔軟で多様な流れの中でメディアの価値を再評価する視点が欠かせないように思います。マスメディア的に圧倒的なパワーで同じ情報を流して終わり-そこから先は他人事というのでは、ソーシャルメディアを含めた情報の流れ、コミュニケーションの世界は見えてきません。1対多の構造に乗って、情報をただ流すだけのやり方には、情報の受け手自身が飽き足らなくなっています。メディアを運営する立場からしても、マスメディア的な手法が絶対である時代はとうに過ぎたと言わざるを得ません。

「ひばりタイムス」の場合も、既存のマスメディア的手法に距離を置いたところで地域メディアとしての模索を続けているように見えます。たとえば報道メディアとしての価値を測る手段について北嶋さんは「一つひとつの記事がサイトの重みを測る目安だと思っています。サイトの趣旨や目的、アクセス数よりも、こちらの土俵がもっと厳しい場になります」と語っています。

どういう意味でしょう。インターネットが出現して以来、それまでは聞いたこともない「アクセス数」「ページビュー」「訪問者数」などの言葉が飛び交いました。

初めは「ホームページ」と呼ばれていたウェブサイトは、ページビューや訪問者数などの数字で比較されるのが常でした。報道を目的とするニュースサイトも常にページビューの多寡がすべての価値基準の中心となり、ネット広告ビジネスの世界が一気に広がりました。

SNSが普及し、サイトによっては「荒れ」たり、「炎上」したりして、ニュースサイト運営者に緊張を強いることにもつながりましたが、最近では炎上するほどアクセス数が増える-といった自虐的な受け止め方も珍しくなくなっています。健全とはいえないでしょう。

「一つひとつの記事がサイトの重みを測る目安」になるという北嶋さんの考え方は、利用者あるいは読者一人ひとりがその記事をどう受け止めたかについても価値判断の指標にしたいと考えます。「アクセス数」「ページビュー」などの、単なる数字で置き換えられる指標とはだいぶ異なります。

記事を配信した後の動き、たとえば利用者の受け止め方や反応、提供された情報がどう理解され、どんなアクションに結びついたのか、そのニュースが誰と誰を結び付け、どんな価値を生み出したのか、ソーシャルメディアといわれるサービスがどんな役割を果たしたのか-などの点も視界に入ってくるはずです。

(次回に続く)

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