「令和のローカルメディア 防災・関係人口拡大に向けた課題」が2021年7月末、あけび書房から発売になります。東日本大震災後のローカルメディアの現場を追い続けている松本松本恭幸さん(武蔵大学教授)からの誘いで、ビデオ作家で、NPO法人市民がつくるTVF副代表の佐藤博昭さんとフリーライター佐藤和文が参加しています。佐藤和文は「第1章 立ちすくむ地方紙―未来を引き寄せるために」と「第5章 新たなウェブメディアの潮流-地域のウェブメディアはこれからどう発展していくのか」を担当しています。アマゾンで予約受付中!
「ローカルメディア」とひと口に言っても、現場の実態や意味合いは複雑で多様です。既存の新聞やテレビ・ラジオまで含めた「ローカルメディア」の可能性についてトータルに表現した例も、それほど多くないように思われます。
ローカルメディアの世界は、時には微弱電流のように細々としていますが、人のかかわりがさまざまに存在する、不思議で、多様な世界です。「令和のローカルメディア 防災・関係人口拡大に向けた課題」では、このメディア世界をなるべく丹念に見渡しながら、近未来につながる議論の材料を提供しようとしています。結論を導き出すのは第三者的な専門家や観測者ではありません。複雑な現場をよく知る「中の人」自身が立ち上がる以外に道は開けません。
以下、参考までに目次を掲げます。
▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼
まえがき―3.11からコロナ危機までの期間、ローカルメディアはどう変わったのか
第1章 立ちすくむ地方紙―未来を引き寄せるために
はじめに
① ローカルメディアはネット社会とともに
ネット草創期を振り返る
縮む新聞―地方紙の苦境
「新聞」から解決策は生まれない
② 地方新聞社の新展開
メディアプラットホームのすすめ
古くて新しい問題「ハイパーローカル」
参加型メディアであること
「上から目線」は最悪の禁じ手
③ 静岡新聞社の挑戦
画期的な「イノベーションリポート」
シリコンバレーが改革の機運つくる
大石前社長へのインタビュー
④ ローカルメディアの手掛かりはどこに?
イメージは「メディア・ビオトープ」
地方新聞社ならではの資源
古民家再生とローカルメディア
第2章 CATVはどこへ向かうのか
―業界再編が進む中で地域密着志向の独立系CATV局の目指すもの
はじめに
① CATV局による自主放送
地域の情報を伝えるコミュニティチャンネル
コミュニティチャンネルの運営委託
② 大都市圏の独立系CATV局の現状
KCNグループの各局
地域に密着した番組制作を目指して
KCNグループの今後の課題
③ 開局から半世紀を迎えた老舗CATV局の現状
世帯加入率9割以上のLCV
コミュニティチャンネルの重視
LCVの今後の課題
④ 他局とのつながりを通した事業展開の可能性
地上波民放2局の宮崎で誕生したBTV
海外の放送局との交流を通して
⑤ インフラビジネスからコンテンツビジネスへの回帰
ニュース報道に取り組む中海テレビ放送
米子をハブにした情報配信
中海テレビ放送の新たな挑戦
第3章 コミュニティFMの変遷① ―災害時の役割をめぐって
はじめに
① 阪神・淡路大震災をきっかけに誕生した「FMわぃわぃ」
② 中越地震、中越沖地震の災害放送
臨災局をきっかけに全国初のコミュニティFM局の開局
コミュニティFM局から臨災局へ
③ 3.11で数多く誕生した臨災局
コミュニティFM局による災害放送
臨災局の開局支援
④ 熊本地震の災害放送
災害時に市民に聴かれるための平時の放送
総合通信局による臨災局支援と残された課題
第4章 コミュニティFMの変遷② ―地域づくりの役割をめぐって
はじめに
① 21世紀の沖縄における開局ラッシュ
県庁所在地に誕生した2局目のコミュニティFM局
人の繋がりを通した新たな開局
② おらが街のコミュニティFM局
聴取率83.7%のコミュニティFM局
地域に密着した様々な取り組み
③ 観光協会が運営するコミュニティFM局
オフトーク通信に代わる町民参加型メディアとして
第三セクターに代わる公設民営局
④ 離島でのコミュニティFM局開局
苦戦するNPOによる開局
CATV局による開局
⑤ 近年開局したコミュニティFM局の運営方式
「きらら方式」による開局
「京都三条ラジオカフェ」をモデルに開局
コミュニティFM局にとってベストの運営方式とは
第5章 新たなウェブメディアの潮流
―地域のウェブメディアはこれからどう発展していくのか
はじめに
① 自由なメディア論が地域を耕す
既存メディアにとってのヒントも
東日本大震災をきっかけに
ローカル由来のウェブメディアを支える人・ヒト・ひと
② 西東京をカバーする「ひばりタイムス」
自然体で地域のテーマを追う
事実を伝えることの難しさ。地域のリアリティを踏まえて模索
メディアOBがローカルメディアを立ち上げるとき
③ メディアの現場を拡張する「TOHOKU360」
参加と連携が最大のエネルギー
試行錯誤が続く参加の仕組みづくり
地域メディアの目標は「地域連携」
第6章 地域映像祭の動向 ―その課題と展望
はじめに
① 市民映像のハブとしての東京ビデオフェスティバル
TVF2021に応募された映像
TVFの42年と市民映像作家たち
市民映像が向き合った地域の課題
① TVFの初期の動向と市民映像作家たちの課題
②過疎化と高齢化に向かい合った映像作品
③ 地域で発生した困難を地域だけの問題にしない
② 今日の地域映像祭での地域づくりにつながる取り組み、そこで生まれる映像作品
地域の魅力と場所の力
地域と映像制作の新しい関係
市民映像のハブとしての映像祭
第7章 自治体広報の新たな展開
―防災、シティプロモーションに向けて
はじめに
① 大規模災害時の被災地での自治体広報
東日本大震災での対応
熊本地震での対応
② シティプロモーションに向けた自治体広報
首都圏、関西圏でのフリーペーパーの発行
県域民放局に代わる地域映像配信を目指して
第8章 市民メディアの現場は今
―SNS全盛期における市民メディアの活動の担い手の現状
はじめに
① かつての市民映像の作り手は今
各地の市民映像祭
地域の映像の作り手がつながるビデオサークル
若い世代の市民映像制作者を育てるために
② ミニコミの現状
人と地域をつなぐミニコミ
地域のモノを届けるミニコミ
③ 市民ラジオの取り組み
④ 広がる市民のトーク空間
地域で開催される多様な市民講座
市民が対話する哲学カフェ
⑤ インターネット放送によるトークライブ配信
商店街のインターネット放送局
コミュニティFM局に代わるインターネット放送局として
終 章 防災と関係人口拡大に向けたローカルメディアの課題のまとめ
はじめに
新聞・放送系ローカルメディアの動向と課題
市民、自治体によるローカルメディアでの発信の動向と課題
あとがきにかえて―ローカルメディアの将来の方向について
執筆者紹介