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 世の中、分からないことだらけなので…

 世の中、分からないことだらけなので、あまり確定的なことはいえない。ただ、欧米で語られる「ローカル」「地域」は、やはり 欧米ならではの前提がさまざまについている。だから米国のモデルを分析しているうちは何となく同じ話をしているようでも、自分の田んぼで何かを作り上げようとすると、そのモデルはあまり役に立たない。

 インターネットは米国発祥なので、米国事情を気にするのは当然なのだけれども、ここまでネット環境が身近になったのだし、メディアである以上、そこから逃れることは不可能でもある。そろそろ自分の田んぼでものを作ることを真剣に考えた方がいい。ご多分にもれず、その努力が10あるとしたら、ひとつか二つ成功するのがせいぜいだろう。時間もかかるが、ネット対応が立ち遅れた新聞業界にとって、そのプロセスは決して無駄にはならない。

 AOLという、超巨大企業が全米のローカルを支配しようとして始めたモデル(Patch.com)も、実際に関係者に話を聞く限りでは、一体、誰が幸せなのか分からなかった。

 加えて、何と言っても米国モデルの「ローカル」は「民主主義」の土壌が前提になる。日本ではどうやったら「ローカル」の掘り起こしや開拓が可能なのかを考えるには、そのポイントでも、自分の田んぼなりのアプローチが必要だ。

 さらに加えて、これは単なる思い過ごしかもしれないが、米国で言われる「ローカル」は、文字通り、地付きのローカルであるような気がする。AOLのモデルも、その土地に生きる人々、市民を囲い込むストーリーであって、たとえば、ローカルにあって、ローカル同士をネットワークさせる熱意や、グローバルな展開を志向する「グローカル」は、あまり考慮されていないようなのだ。

 ビジネスモデルの開発がまずあって、地域をそのマーケットにする発想は、ありえないことではない。可能ならばどんどん追求すればいいが、AOLのモデルはソーシャルメディアの使い方ひとつとっても、なんだかおざなりだなあ、というのが正直なところだ。ハイパーローカルサイトを全米に900作るだけではたぶん決定的に足りない。不十分なモデルをいたずらに拡大しても、トータルで勘定が合わないのはやむをえない。

 全米に張り巡らしたプラットフォームを縦横に組み合わせながら、その地域の誰かが幸せになる場面を無数に開拓していかないと、ものにはならない。AOLモデルの場合、ローカルだけに固執せずに、さらに足し算して、全米規模の新しいメディアプラットフォームをつくる方がよほど可能性があると思うが、現実のものにはならないようだ。

 「ハイパー」がつくかどうかは別にして、いわゆるローカルメディアを成立させるには、その地域をどうするかについて真剣に考えるプレイヤーが必要だ。「ハイパーローカル」の代表例として取り上げられがちなAOLモデルだが、その意味で、まったく別物といっていい。

 もともとのことを言ってしまえば、ひとつのモデルですべてのローカルが成り立つ方向には向かっていないのではないか。あまりに手前味噌で恐縮だが、少なくとも、自分の住む地域にオンラインを重ねてみる限り、人々の価値観は手ごわいほどに多様で、複雑だ。ローカルもグローバルも同時に見えてくる、柔軟かつ魅力的な視界の中で、地域に由来するメディアの役割は設定されなければならない。AOLモデルは成り立ちが逆さまで、中途半端としか言いようがない。

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