河北新報社という特定のメディア企業に身を置いて40年。ことし3月末に何とか卒業して7カ月が過ぎました。フリーの身軽さを少しずつ生かしながら、地域発の情報発信の意味や、いわゆるハイパーローカルの可能性、地域メディアと市民メディアのありようなどについて小さな取材を続けてきました。河北新報社での、17年に及ぶデジタルメディア経験をあらためて総括し、「ローカルとメディア」にまつわる新たな見通しを得るつもりでいました。しかしながら、特定の新聞社の中から見えていたメディア世界は、予想以上に視野狭さく気味でした。「ローカルとメディア」をテーマに、何事かをまとめるには、事実の把握や関係の理解など、多くの点で不十分極まりないことが判明しました。
というわけで、あらためて取材者志願。ローカルとメディア-特に市民系メディアの実情を追いかける仕事をしばらく続けることにします。題して「ローカルとメディア」シリーズ。お付き合いください。
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宮城県丸森町筆甫(ひっぽ)地区は、宮城県の最南端にある丸森町の、そのまた最南端にあります。福島県と境を接しています。仙台中心に暮らしていると、ずいぶん離れている感じがしますが、実際は、仙台市内から車でゆっくり行っても1時間半で着きます。
【写真】冬支度が本格化した筆甫地区
筆甫地区は東日本大震災で事故を起こした福島第一原発から直線にして約50㌔。地域の人々は、震災後、放射線への不安と向き合ってきました。震災後の筆甫地区の様子を手っ取り早く知るには、インターネットのフェイスブックが最適です。特にソーシャルメディアを地域づくりに活用する意味で、参考になるケースです。
筆甫発の情報発信に取り組んでいるフェイスブックページについて取材するため、「筆甫地区振興連絡協議会」の事務局長、吉澤武志さんを、事務所のある筆甫まちづくりセンターに訪ねました。協議会のフェイスブックに盛んに登場する復興支援員の「まるこ」さんに会うのも目的の一つでした。
筆甫地区のフェイスブックページは「丸森町筆甫地区」の名義で開設されています。フェイスブックのジャンルは「地域」です。
フェイスブックを使った情報発信がどれだけ支持されているかを判断する基準は幾つかあります。その一つである「いいね!」の数は1994に上っています。2000近い「いいね!」をどう見ればいいでしょうか。例えば筆甫地区の人口は約700人です。筆甫地区のフェイスブックページには人口の3倍近い「住民」がいると考えては駄目でしょうか?
毎回の投稿に100人以上の「いいね!」がついています。「いいね!」は、ユーザーが「いいね!」ボタンを押した場合だけカウントされます。フェイスブックには管理者だけが見ることのできる「リーチ数」「閲覧者数」というデータがあります。ある投稿が届いたことをチェックし数字としてカウントしたデータです。そのユーザーがどの程度読み込んだかについては判断できないのですが、フェイスブックページのパワーを計る目安となります。
「丸森町筆甫地区」のフェイスブックページのリーチ数は、写真がある場合が1500から2000、写真がなくても1000前後だそうです。
約700人の地区が運営するメディアとしてはなかなかの数字が並んでいるのではないでしょうか。その人気の秘密は(1)写真をふんだんに掲載している(2)書き手の顔が見える(3)何よりも地域の実情を伝えたいという熱意が伝わる表現になっている-などにあります。
(次回に続きます)
【写真】筆甫地区のフェイスブックページについて説明する筆甫地区振興連絡協議会事務局長の吉澤武志さん