東日本大震災からの復興に向け、被災地では無数の取り組みが進んでいます。政治や行政の仕事ぶりが、被災した人々の期待からかけ離れていることもあり、復興の足取りは重く、息苦しいまでの切迫感を伴っています。そんな中にあって、筆甫地区のように、自らの目標を設定している人々や組織が数多く存在します。震災から3年9カ月が過ぎて、外部からの支援に頼らず、自力で歩もうとする意識も高まっているように見えます。そんな空気を確認しながら取材するうちに、「個人(市民)と協働するメディア」という言葉が頭から離れなくなりました。まだ霧の中を歩いているようにあやふやですが、書いてみます。
フェイスブック上では「まるこ」のニックネームを使っている復興支援員の八巻眞由さん(22)=丸森町出身=は、故郷が震災前のように元気になるよう、地域の人々とともに歩んでいます。「まるこ」さんには「コミュニティカフェ」を通じて、丸森町の復興を目指す夢があります。「自分にはお金があるわけではないので、難しいことも多いのですが、地域の人たちが集まれる場を何とかして作りたい。場所を探しているところです。必要な資金はクラウドファンディングを使えないかと検討しています」
「まるこ」さんの企画書のタイトルは「森のコミュニティCAFE」。「『若者がいない』なんて、もう言わせない。」という副題が添えられています。「まるこ」さんには「ジュニアリーダー」として地域で活動してきた経験があります。「ジュニアリーダー」は中学、高校生が中心となり、小学生のお姉さん、お兄さん役を務め、さまざまな地域活動に取り組みます。
東日本大震災直後、まず集まったのはジュニアリーダーの仲間だったそうです。一緒に避難所に向かい、支援活動に取り組みました。ジュニアリーダーの活動は、まるこさんの原点です。ジュニアリーダーの活動がきっかけになって青年団を立ち上げ、地域活動を続けたおかげで復興支援員の職につくことにもなりました。
「まるこ」さんの「森のコミュニティCAFE」は、ジュニアリーダーや青年団の若者たちを発案者、担い手として設定している点が特徴的です。「地域のために」ではなく、あくまで自分たちのために主体的に動きながら「行くと楽しいコミュティ」を演出します。そこに「地域を活性化したいと思っている人」が集まり、UIターンの促進、担い手の増加、人口流出にストップがかかるという流れをイメージしています。
個人的にも嫌いな言葉の一つに「限界集落」というものがあります。「まるこ」さんに確かめたわけではありませんが、「地域に若者はいる」と書きおこす発想や実践が、いわゆる「限界集落」的コミュニティ論や地域論と、大きく異なるのは間違いありません。
とはいえ、コミュニティーカフェを実現するための課題は多いので、一つひとつ乗り越えなければなりません。冒頭に書いた「個人(市民)と協働するメディア」は、「まるこさんの夢」のような、地域に生まれる市民のプランと可能な限り協働する役割を自らに設定します。
「まるこ」さんへの取材でも感じたことですが、地域のメディア、たとえば地方新聞社には「まるこ」さんが向き合っている課題の解決に役立ちそうな情報やスキルが多様に蓄積されています。地域に由来する新聞社特有のフィールドとして、さまざまな地域課題に立ち向かう個人(市民)と協業する現場を開発できないか。規模の大きな資金や人材の豊富な環境を前提とするような流行りの技術やサービスを追い求めるのもいいですが、地域メディアとして、手慣れた手法で、しかも多様なニーズを想定できる現場を意識的に設定し、メディアとしての新しいステージを開発する方がよほど現実的なような気がします。
【写真】はまるこさんの「森のコミュニティCAFE」資料
(次回に続きます)