フリーになってからの変化の一つに、…

　フリーになってからの変化の一つに、インタビューする際に録音したデータをしっかりおこすようになったことがある。記者の一人として仕事をしていたときは、速さが勝負みたいなところがあり、録音してもほとんど聴き直さなかった。メモを使えば、大体、それで済むという事情もある。
　
　フリーになってからはインタビュー相手を決めるにも、自分の判断が入るし、相手から引き出せた事柄をアウトプットするのも自分次第だ。インタビュー内容を何度も読み返すうちに、記事として表現するためのルートが幾つも見えてくる。人間は表現されるに足る要素を実に数多く抱えているものだと、初めから分かっていることに感心している。特に、人の語り口に潜む、意味の多様で複雑なことには、あらためて要注意だ。
　
「締切」「行数」がすべての新聞社の中で、長い間、過ごすうちに年季だけは入る。だが、取材者、表現者としてのレベルが本当に上がったかどうかは我ながら疑問。少なくとも人に教えられるだけの蓄積ができているとはまだ思えない。