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漆田義孝さんのメディア活動/発信は「ありのまま」に(1)

gaito_urushi漆田義孝さん(31)を紹介します。仙台市在住でNPO法人メディアージの代表代行を務めています。東日本大震災は多くの人々の暮らしを変えました。漆田さんも、震災の半年後、それまで務めていた会社をやめました。「時間的な自由を生かして震災で被災した東北の人々を支援する仕事をしたい」と思ったそうです。青森県出身。東北大卒。

震災直後、漆田さんの会社は全員帰宅することになりました。街に出た漆田さんは仕事でも使っていた私物のカメラで震災直後の様子を撮影しはじめました。目に飛び込んでくる光景を片っ端から・・。

「それまでの自分の人生であったこととは、全く違う何かが起きたらしいという直感は働きましたが、撮影してどうするかまではまったく考えませんでした」

あってはならない事態の進行をそのままの形で、ありのままにキャッチし、残したいという衝動に駆られたのでしょうか。漆田さんが震災当時を振り返りながら話す言葉に耳を傾けていると、同じ震災を同じ街で経験した記憶がよみがえります。

震災によってもたらされた破壊と衝撃。奇妙な静けさに満ちた日々・・。まるで漆田さんの言葉や表情をフィルターとして、 震災後の情景がこちらに流れ込んでくるようです。

「その後、しばらくたって、撮りためた写真をNPO法人20世紀アーカイブ仙台副理事長の佐藤正実さんに提供するという重要な出会いもありました。今になってみれば、自分にとって、非常に重要な意味があったと分かります」

漆田さんは個人的なスキルを生かす形で、インターネット動画を活用した情報発信を軸に取り組んでいます。その一つが国政選挙の際に身近なところで行われる街頭演説をインターネットのYouTubeで動画中継する「のら中継」「のら配信」です。

gaito_urushi02衆議院選が行われていた2014年12月5日の昼近く、JR仙台駅東口の街頭にビデオカメラを三脚に据えた漆田さんの姿がありました。厳しい寒さの中、候補者が街頭演説するのをひたすら撮影していました。公示日や話題となりそうな有力政治家が来るような特別の場合を除けば、街頭演説を取材するメディアはまずありません。この日もカメラ取材は漆田さん一人でした。

新聞社が国政選挙クラスを取材する場合、通常、取材班によるチーム取材となります。しかも、街頭演説は、候補者を取り巻く陣営の「熱量」を測定するために出かけることがあるかどうかといった感じでした。

漆田さんがたった一人でビデオカメラを向ける姿を見て、とっくに忘れてしまった何かを思い出したように感じました。軽い衝撃と言ってもいいかもしれません。「のら中継」はどんな効果を狙っているのか。「のら中継」をせざるを得なかった事情はどんなものなのか。詳しく聞いてみたいと思うのでした。

次回に続きます】

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