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プロメディアとは別の視線/発信はありのままに(3・完)

urushida_san NPO法人メディアージの動画配信企画「まつりごと」は2012年12月にスタートしました。「政治を身近にするUstream番組」の副題からも分かるように「政治について話しにくい」「考えるのが格好悪い」という風潮を打破する狙いがこめられています。斬新なメディア活動を続ける漆田義孝さんらが維持・運営する現場からは、参加者の多様な関心や表情も含め、プロメディアの世界とは趣の異なる視線を感じます。

漆田義孝さんは「まつりごと」の狙いについて以下のように話しています。

「友だちとは政治と宗教、野球の話はするな、と親に言われていました。政治の話をする機会も仲間もいない。それは実態としておかしいのではないか。政治は暮らしに身近なものであるはずなのに、マスメディアも中立であることに熱心で、リアリティ-のある情報を発信できていないようです。だったら、まず、わたしたち自身が政治について話すことから始めよう。参加者同士の話がどんどん盛り上がって、ネット上の映像コンテンツとしては、もしかしたら欠陥があるものになるかもしれないけれど、わたし自身が公開の場で、わたしはこう思う、ぶっちゃけさあ、と話すことで、政治の話をタブー視する空気を壊すきっかけになりはしないか」

「街頭演説のら配信」を初めて実施したのは2013年6月の参議院選です。「のら」は「野良仕事」の「のら」です。宮城県の立候補者全員の街頭演説や応援演説の様子をインターネットのサービスの一つであるYouTubeを使って中継しました。2013年の参院選はインターネットが解禁されて初の国政選挙でした。「街頭演説のら配信」は、経験や人脈が不十分でも「一番手っ取り早」くできる活動だったと、漆田さんは振り返ります。

その「まつりごと」の活動が、1年半後の衆院選では、入念な準備と覚悟を要する「候補者インタビュー」を実施、今年(2015年)4月には、より身近な統一地方選を迎えようとしています。

「メディアージ自体、選挙運動をしているわけではありません。法律上の解釈が難しくて、選挙や政治に関する情報をどう扱えばいいか分かりませんでした。そんな中で、参院選でネットが解禁されたので、とりあえず政治家の話、政治家の言葉をネットに乗せてもかまわないのではないか、と判断しました。『まつりごと』で政治について話すだけではなく、もっと踏み込んだ活動が可能なのではないかと考え、街頭演説を勝手に中継することを思いつきました」

2014年暮れの衆院選でも「街頭演説のら配信」は行われました。

「あらかじめ選管に相談することも考えつきませんでした。実際にやってみても、選管からコンタクトもありませんでした。どちらかと言えば、政党や候補者がどう反応するかが気になっていました」

「政治を身近なものに」という、シンプルな思いが先行する形で「まつりごと」は発想され、現在もなお、そのときどきのトピックに合わせる形で続いています。

「(今では)政治関係者とのコネクションづくりを意識しています。候補者を応援するということではありません。仕事や個人的なお付き合いの中で、政党や政治家に近い関係者を何人か知っていたので、その人たちの協力を得ることができました。わたしたちの活動を理解してくれるすべてのみなさんに心から感謝しています。

●「まつりごと」のUstream番組サイト

●「街頭演説のら配信」などを見られるYouTubeチャンネル

 

◎イスラムについて考えよう

2015年2月13日の夜、「まつりごと」の特別企画として、パキスタンからの留学生=仙台在住=をゲストに招き「イスラム」について知る場が設定されました。参加者は見学者も含めて10人ちょっと。自己紹介から始まり、参加者が質問にゲストが答える形で進みました。参加者がツイッターで発信した内容から雰囲気を一部紹介します。ゲストをまじえたやりとりが「まつりごと」に参加する人たち自身の気付きにつながっている様子がよく分かるはずです。

【以下、ツイッターから】

・今日は「まつりごと-政治を身近にするUstream番組」の配信を担当いたします。本日のテーマは、イスラム教と私たち。ぜひご覧ください。20時からです。
・パキスタンからの留学生である○○○さんは日本に来て1年半。福島原発事故のことは「気にはしていたが、仙台と福島は遠い」ことを知っていたので、そこまで不安はなかったとのこと。
・「仙台にもモスクはあるが、どこで礼拝するかではなく、礼拝をきちんと行うことが大事。礼拝の方角はスマホで確認している」とのこと!便利ですね!
・話は、イスラム教徒の「食事」について。アルコールや豚肉など、禁止されている物も多いですが、ケバブ、ローストビーフなどを食べているそう。○○○さんはお寿司が大好物だそうです。
・イスラム教では、一夫多妻制を認められてはいるものの、複数の妻に対して平等に接しなければならず、最初の奥さんに許可を取る必要もあるため、現実的には一夫多妻をしていない。
・国によってイスラム教徒に習慣などの違いはありますか?「ルーツは同じであり、どの国であっても同じルールで信仰しているはずです。
・アラビア語で書かれているコーランを読むために、ウルドゥー語や英語を主に用いているパキスタンの人々も、アラビア語の教育を受ける。
・スンニ派とシーア派は、信仰対象なども同じですが、カリフ(指導者)を話し合いで決めるべきだというスンニ派と、ムハンマドの子孫がカリフになるべきと主張するシーア派という違い。
・自国が侵略国に攻撃された時、復讐するというのはジハードの一つであるが、近年過激派はジハードを悪用し、侵略を正当化している。一般市民を巻き込むのは間違い。」
・クルアーン(コーラン)は一連の歴史的な流れが書かれた書物であって、ジハードについて書かれた段落も、そこだけを読んで理解するのは間違っている、と。確かに。
・誰にも他人に何かを強制する力はなく、コーランにも信仰を強制する記述はない。他人への寛容さが、イスラム教が「平和の宗教」と言われる所以なのかもしれません。
・「どの社会でも善人と悪人がある。悪人のみをもって、コミュニティー全体を悪として良いのか。ISILの構成員はムスリムのごく一部に過ぎない。
・○○○さんが強調していたのは「全体を見る」こと、「意見を交換する」こと。誤解を減らすために、広い視野を持って生活していくことが大切ですね。
・出会う人の数が少ないと、どうしてもその人の文化に対して誤解しがちだ。より多くの人たちと接し、全体を見て理解する努力をすること。たとえばムスリムへの理解についても同様だ。
・異なる文化を持つ方々と生活する時は、調べ物をしたり、より多くの人と話をすることで、異文化の人々への理解も深まり、共に生きていくことができる。

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漆田義孝さんのメディア活動/発信はありのままに(1)

「政治を語る場をつくる/発信はありのままに(2)

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