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参加の場としてのアーカイブ/「地域」と「メディア」(2)


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最初にNPO法人「20世紀アーカイブ仙台」副理事長、佐藤正実さんの言葉を紹介します。

「『地域メディア』と『アーカイブ』は表と裏です。地域メディアは『発信』、アーカイブは『記録』を担います。どちらが欠けてもうまくいきません」

「20世紀アーカイブ仙台」の活動はとても多様です。代表的なプロジェクトの一つに「どこコレ?–おしえてください昭和のセンダイ」があります。市民に呼び掛ける形で、古い写真や映像を収集し、撮影された時間、場所、その映像にまつわる記憶を一点一点について掘り起こす活動です。

2015年4月から2か月間、せんだいメディアテークとの共催で開かれた「どこコレ?」展示会には、約100枚のモノクロ写真が展示されました。「どこコレ?」は今回が4回目でした。

dainenji影された場所や時間等について心当たりのある人が、ポストイットに書き込んで貼れるようになっています。そのうちの1枚に思わず引き込まれました。たまたま、最近、引っ越した地域の昭和の風景を記録した写真でした。ポストイットには、当時を知る人たちのさまざまなメッセージが書き込まれてありました。古ぼけた1枚の写真と、書き込まれたメッセージから伝わってくる「土地の記憶」。新しく始まったばかりの暮らしの実風景を束の間、重ね合わせる時間になりました。土地の記憶が人から人へ、時代から時代へとつながる瞬間だったとも言えます。

古い写真に記録された風景は、撮影者によって切り取られた静的なフレームにおさまっていますが、その写真を見る「私」の頭の中には、実際の風景が音や色彩とともに広がります。古い写真のフレームを大きく超えた実風景が広がるわけです。佐藤さんらが市民と協力する形で育んでいる地域の「アーカイブ」は、単なる振り返り型には終わりません。その点にこそ、佐藤さんがさらに次の段階である「メディア」としての機能や役割を意識する理由が潜んでいるような気がします。

半面、「これは急がないと、土地の記憶がどんどん失われてしまう。土地の記憶を一点でも多く確定するための時間との勝負になる」とも思いました。

この点、佐藤さんの危機感が伝わってきます。「古い写真や映像が持つメッセージを一つひとつみんなで明確にする必要があります」。佐藤さん自身が説明役になる関連イベント「考えるテーブル」では、写真の撮影場所などが次第に明らかになっていく様子について解説します。土地の記憶が確定する過程自体、多くの人々に伝えるべき価値を含んでいると佐藤さんは考えています。

「今後、メディアとしての発信力をどうつけるかが課題です。せんだいメディアテークのスタッフとも相談しているところです。時代や場所の確定につながる情報をどう拡げていくのかなど、工夫が必要です」

写真(上)は、せんだいメディアテークで開かれた4回目の「どこコレ?」で、有力情報をもらった方に確定判子を押してもらっているところ。(写真提供は「20世紀アーカイブ仙台」)

写真(下)は、かつての大年寺山あたり(現在の仙台市太白区茂ケ崎地区)を写した風景写真と市民から寄せられたコメント。

(次回に続きます)

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