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多様性が楽しみ。市民メディア/「映像カフェせんだい」訪問

eizo_cafe_p01仙台市を中心に活動している市民メディアグループ「映像カフェせんだい」の例会に参加しました。東北大名誉教授の関本英太郎さんをまとめ役に、市民参加のメディア表現について実践しています。メンバーがこれまでに作り上げた作品を上映し、批評し合うというので、取材を兼ねてお邪魔しました。

「映像カフェせんだい」は2010年6月にスタートしました。翌2011年3月の東日本大震災を乗り越え、6年目の活動に入っています。例会は月1回程度開かれ、撮影や映像編集の技術習得、作品企画のレベルアップなどを目指して試行錯誤を続けています。

今回、上映されたのは4作品。「青葉区民まつり」は、長い棒の先にデジタルカメラを取り付けて撮影されました。撮影視点を高くとるとともに、手元の端末との間をWiFiでつないで撮影する環境を工夫しました。新しい撮影方法を試した試験的な作品でした。

「狐の嫁入り行列」(11分)は新潟県津川町に伝わる観光イベント「狐の嫁入り」を題材に、仙台から日帰り撮影した力作でした。「狐の嫁入り」の日は観光客が訪れ、人口5千人の町が5万人にも膨らむそうです。移動もままならない混雑の中、「狐の嫁入り」の由来などを説明する会場の音響をうまく取り込んでいました。午後5時から9時までのイベントのため、どうしても夜間撮影となるハンディもありましたが、夜景をうまく処理した詩的な映像作品になっていました。

「守る 受け継がれる神楽」(7分)は、宮城県の重要無形文化財「登米市豊里町の上町法印神楽」が2007年に仙台市内で演舞を披露した際に撮影した映像と、地元保存会のメンバーに対するインタビュー映像で構成されていました。「映像カフェせんだい」のメンバーが直接インタビューするのではなく、地元の神楽関係者自らがマイクを手にとり、第三者が取材するのとは異なる、親密感あふれる作品に仕上がっていました。

「森の人」(3分)は、他の作品がまつりや伝統の記録・保存といった、社会性や目的を感じさせるのとは対照的に、作成者の感性そのものに引き込まれるような作品になっていました。

「森の人」は言うまでもなくオランウータンのこと。使われている映像素材は2種類だけという非常にシンプルな作りです。メーンは動物園で檻の中にいるオランウータンの顔を、間近で撮影した映像です。「森の人」が何かを考えているような迫力ある映像に、緑と光あふれる森の情景をサブとして組み合わせていました。

生き生きとした、空気感たっぷりの森の映像との対比で、動物園に閉じ込められているオランウータンの苦悩が伝わってくるようでした。「森の人」の目は充血していて、見ているうちに次第に気持ちが落ち着かなくなりました。見る者にとっての「余白」の多い、市民メディアの可能性を感じさせる作品でした。

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