フリーで仕事をするようになって丸1年が過ぎました。東日本大震災の後始末もあって、定年後、2年間も同じ新聞社にとどまってしまいました。さらに1年間は事情があって、というよりも、自分の判断ミスで回り道してしまいました。多くのみなさまにお世話になり、経験の一つ一つが現在に生きている点で、無駄なことは何もないのですが、思い定めた分野で、自分なりの目標と成果を生み出していくには、自分に与えられた時間を意識しながらしっかり準備する必要があります。
その意味で、定年前の数年(あるは数カ月)の過ごし方が重要です。事前準備して進んだつもりでも、数歩進んだところで見えてくる風景はまた異なるので、あまり思い詰めるのも禁物です。
暮らしを支える経済的な基盤も含めて、自分の才覚だけで環境を作っていくのが、本当の意味でのフリーの立場です。どんな案件が仕事になるのかも含めて、「脳内」と「脳外」で地味にリサーチしながら、その道で活動している人々に直接、働き掛け、ささやかな関係を構築します。定年前の縁のおかげで仕事らしきものに結びつくことがあります。その場合は、お互いに知り得ている範囲内での関係で仕事が生まれるのか、従来からの関係を踏まえながらも、質的な拡大基調をたどるのかがポイントになりそうです。
フリーの立場では、周囲に支援してくれるパワーを期待できません。その意味で、会社時代はいかに多くのリソースを使っていたかがよく分かります。使える時間の総量の範囲内で、どれだけ系列の仕事をこなせるのか、どの系列の仕事にどれだけの時間と目標を設定すればいいのかが重要です。
我ながら地味だし、エネルギーのいることだと思いますが、先ほど見たテレビ番組で、「世界一貧しい」(前)大統領が「あなたは幸せですか?」「周囲の人の幸せを奪い取ってはいませんか?」と発言していました。自らの幸福度など、自分の口から言えるものでもありませんが、フリーで仕事をコントロールする環境を一定のレベルで構築できれば、自分のせいで周囲の人々が不幸せになるのを最大限回避できるような気もします。
あれやこれやを含めて、仕事というものをめぐる、ある種の「勘」働きがポイントです。組織に守られた40年(!)の仕事現場では考えたこともありませんでした。「フリー1年生」にはそこんところの経験値が少ないので、結果的に多くの人に迷惑をかけることにもなりそうです。